第5回

北海道からケニア、

  そして柏の葉キャンパスへ?!

     紆余曲折を経て菌根菌の研究者

【後 編】

取材先:環境学研究系 自然環境学専攻 自然環境評価学分野 修士課程1年(取材時) 藤井恵理奈(以下、「」)

インタビュアー: 小林 柚子さん(基盤科学研究系 物質系専攻、竹谷研) (以下、「」)

【後編】ケニアから柏の葉キャンパスへ。なぜ菌根菌の研究を?

柚:緊急帰国という形でケニアから戻ってきて、大学院に進学することにしたんですね。あれ、なぜ菌根菌かがまだわからない(笑)

恵:そうですよね(笑)ケニアで子供や地域の人たちと植樹をしていたのですが、たまたま数カ月前に植樹をした場所を再訪したんです。当時ケニアは乾季だったから、あまり育ってないかと思ったのですが、樹はすくすく育ってました。

(植樹の五か月後の写真。)

柚:乾季なのに?

恵:学校に植えた樹々に、子供たちが自宅から水をもってきて水やりしてくれていたみたいです。学校に樹がたくさんが植えてあるところも多いんです。樹があると日陰ができ、涼しくなると子供たちが遊べたり、休んだりできるんだなぁと気づきました。身近に樹があって、それを育てるっていいなと感じたのを覚えています。そういえば、森林を守ることは、野生動物の保全にもつながるな、とも考えたりして。大学時代の授業で樹に付く菌のことも知っていて興味もあったし、勉強したくなりました。

柚:なるほど。動物、環境保全、農業、国際協力、山登り、ケニアでの植樹…藤井さんの思考の履歴が、樹と菌の研究に繋がっている感じがします。座学だけではなく、身一つの経験が研究に繋がっている、というのが面白いし素敵です。

恵:そうですね。この研究をしたいと思ったときに、腑に落ちた感覚がありました。

柚:帰国して、研究室はどうやって探したんですか? 

恵:ネットで検索しました。興味あるワードで調べてヒットするのが多かったのが、今の先生の名前だったんです。

柚:そうなんですか!結構珍しいパターンな気がします!私の周りだと学部からのつながりで入る人が多いので、驚きです。それでアポイントメントとって、入学試験を受けたんですね。

恵:そうです。コロナ禍だったのでZOOMで面談して、入試受けることを決めました!

柚:決断力がすごいなと思います。研究は、菌を採取するところから始まるんですか?

恵:そうです。樹の根本をスコップで掘って、ジップロックに入れて持って帰るんです。なんか子供みたいですよね。

(採取の様子。地道な作業。)

柚:たしかに童心に戻れそう。どんな場所に堀りに行くんですか?

恵:全部で5か所で採取する計画で、今4か所達成しました。月1回くらいのペースで採取に行ってます。私が調べている樹は、日本の中部より東にしかなくて、そのエリアで北は北海道、西は石川県、南は富士山、あとは少し離れて鳥取にも採取に行きます。

柚:忙しそうだけど、いろんな場所に行けて楽しそうかも。その樹は、珍しい樹なんですか?

恵:樹自体が珍しいというよりは、地域によって共生している外生菌根菌の種類がどのくらい違うか、などを調べたいので離れた場所で採取してるんです。外生菌根菌と共生する樹、という点では珍しいですけどね。

柚:なるほど。採取する場所も情報のひとつなんですね。菌の種類を調べる、ということは研究室に帰ってきたら細かい作業が待ってるんですね。

恵:そうです。顕微鏡で見ながら菌根菌を分離して、DNAを抽出して、PCRにかけて…と進めていくつもりです。修士1年なので、作業はまだまだこれからという感じですが。

柚:色々経験してこの研究にたどり着いた藤井さんがどんな研究を展開していくのか、楽しみです!

~Diversity and Inclusion を実現するために~

多様な進学パスの先にあるものは?

柚:ちょっと気が早いかもですが、この先も研究を続けるつもりなんですか?

恵:そうしたいんですけど…結構いろんな制度に年齢制限があって、続けられるか不安に感じています。

柚:ああ。ありますよね。奨学金とか、賞とか、謎の年齢制限が。いろんな経験を積んだのはポジティブなことのはずなのに、なんで制限が必要なんでしょう?私も社会人をかじった後に進学していますが、最近そういう人も多くて、悪いことではないと思うんです。

恵:私の友達にも、そういう進学パスの子が多いです。

柚:それこそ、いろんな経験を積んだ人がいる、というのはDiversityのはずですよね。でも制度が追いついていないという…

恵:それは残念なことですよね。大学院には進学できるけど、その先がつながらないのが見えていると諦めちゃいますよね。私は、もう少し早く決断していればな、と考えてしまうことがあります。

柚:でも、藤井さんの経験は他には代えがたいものだと思います。大学院が、もっといろんな経験を積んできたひとが学んで、もっといろんなキャリアを選べる場所になるといいですよね。

恵:自分が何かをやってみたいと思う気持ちに蓋をし続けるといつか爆発するときが来ると思うので、経験上ですが(笑)その気持ちを実現しやすい場所になるといいなと思います。

柚:たしかに。藤井さんがこの先どんな道を選ばれるのかも、なんだか楽しみです。

恵:はい、私も自分で楽しみです!