第4回
研究者への憧れから理系の世界へ
【後 編】
取材先:生命科学研究系 メディカル情報生命専攻 RNA機能研究分野 泊研究室 博士課程1年(取材時) 薛 世玲那さん(以下、「世」)
インタビュアー: 石田 悠華(先端生命科学専攻 人類進化システム分野) (以下、「悠」)
【後編】今の研究に辿り着くまで
悠:以前、学内のイベントで薛さんとご一緒した時に、文系の学部を卒業した後に理系の学部に編入されたとお聞きしました。理系に入り直したいと思ったきっかけは何だったんですか?
世:文系の学部では、環境経済学を専攻していたんですが、向いていないなぁと感じたし、周囲にも向いてないよって言われましたね。
悠:そうなんですね。もともと理系に興味はあったんですか?
世:はい、興味はありました。だけど、進路を決めきれなかったんです。学内のアルバイトで生物系の研究室に入る機会があって、「あー、理系に入りたいな」って思って。
悠:実際にやってみるとなんか違うなって思うこと、ありますよね。でもそこで違う分野で学んでみよう、と思ったところがすごいですね。進路変更を後押しするものはあったんですか?
世:研究者に憧れていたことですね。でも、文系だとちょっと違うなあと思って。
悠:お話を伺っていると、今すごく研究を楽しまれているように感じます。このタンパク質の研究はいつから取り組まれているんですか?
世:大学院の修士課程で今の研究室に入ってからですね。
悠:このタンパク質を研究したくて今の研究室に?
世:実は違うんです。今、私が在籍している研究室は、もともとタンパク質を作る元になる小分子RNAという短いRNA分子とそれにかかわるタンパク質をメインにしていて、今私が着目している天然変性タンパク質をメインにはしていなかった研究室なんですよ。学部のころに、小分子RNAが体内で働く機構に興味を持つようになって面白そうだなと思って今の研究室に入りました。そしたら、「こういう面白いタンパク質があるけど、やる?」って聞かれて。それで始めましたね。
(実験室の様子)
悠:じゃあ、自分が元々やろうと思っていたことは違うことに取り組まれているんですね。
世:完全にやろうと思っていたことを研究しているわけじゃないです。でも、それも研究室に入る楽しみかなって思います。自分が元々これをやりたい!って決めて取り組んだわけじゃないけど、やり始めたら面白くなったんですよね。
悠:やり始めたら楽しくなっちゃうの分かります。
悠:細胞を使った実験だと時間も手間もかかる印象がありますが、どうですか?
世:そうですね。実験のサイクルによっては土日も実験しないといけないということはあります。あと、共同研究で他の研究所とかに行くこともありますね。
悠:うわぁ、移動もあると大変そうですね…
世:毎日じゃないですけど、午後は共同研究先に移動して…って日もあります。
悠:時間のマネジメントも大事ですね(笑)
世:本当そうです。気がついたら実験で一日が終わってしまうこともよくあります。体力も大事です(笑)
~Diversity and Inclusion を実現するために~
自分の意思を大切にしてほしい。
世:東大もそうですけど、特に理系になればなるほど、どうしてこんなに女性が少ないんだろうって思いますね。
悠:たしかに男性多いですね。
世:これって、女の子は地元に残る風潮みたいなのが影響しているんですかね?
悠:たまにそういう話は耳にしますよね。でももったいない…
世:うん、もったいないなって思いますよね。能力があってもそれを生かしきれないというか。
悠:そうですね。でも、何かがあるんでしょうね。
世:周囲の人が「女性はこうであるべき」みたいな考えを持っているのは深刻な問題だなって思います。
悠:たしかに進路を決めるときは、周囲の意見とか行動とかを参考にする人も多いですよね。
世:そうですよね。だから、反対する人がいれば、それを押し切る強い意志がないといけないし、後押ししてくれる考え方を持つ人に出会えるかどうかで選択が変わってきてしまいますよね。そのハードルがあるのが悲しいですね。
悠:今は女性が活躍できるように、いろんな制度が整えられ始めていますよね。今後少しずつ変わっていくといいなと思います。
世:そうですね、研究者に占める女性の割合も上がりつつ、女性研究者の人数も増えていくといいですよね。